遺伝性の病気とはどのようなものでしょうか?
遺伝性の病気とは、遺伝子に原因(変化)がある病気のことをいいます。
例えばファブリー病の場合、α-ガラクトシダーゼという酵素をつくる遺伝子に変化があることで発症します。
この遺伝子の変化はご両親のどちらかから受け継いだ可能性がありますが、ご両親にはその遺伝子の変化が全くなく、ご本人の突然変異の場合もあります。そのため、ご本人が遺伝性の病気だったからといって、それが必ず親御さんから受け継がれたものだということにはなりません。ただし、一旦遺伝子に変化が起こると、その変化は次の世代(お子さんたち)に伝わる可能性があります。
遺伝子の変化はだれでも必ずもっています。また、20人に1人は何らかの遺伝子の変化を原因とした病気をもって生まれてくるともいわれています。遺伝子の変化は人の多様性をあらわしており、ファブリー病もそのような「体質」をもって生まれてきたともいえるのではないでしょうか。
遺伝子の検査は一般的な検査と何が違うのですか?
一般的な検査は、主に検査をしたそのときのあなたの体の状態、例えば病気であるかどうかや病気が進行しているのかを調べるためにおこなわれます。それに対して、遺伝子の検査はあなたが生まれてから亡くなるまで一生涯変わることのない遺伝子の情報を調べます。
そのため、遺伝子の検査は一般的な検査とは異なる3つの特徴があります。
1:「生涯変化しない」
遺伝子は生涯変化しません。そのため今検査をしても、10年後に検査をしても結果が変わることはありません。いつ受けても同じ結果が得られるので、ご自身が納得するまで考えてから遺伝子の検査を受けることができます。
2:「家系で同じ情報を共有している可能性」
遺伝子は家系で同じ情報を共有している可能性がありますので、検査結果がほかのご家族にも影響する場合があります。
3:「将来の発症を予測できる可能性」
今は症状があらわれていなくても、将来の発症を予測できる可能性があります。
こうしたことから、遺伝子の検査はメリットとデメリットをよく考えて、ご自身が納得してから受けることが大切です。
遺伝子の検査と聞くと、知りたいことがすべてわかる検査のように期待をもたれるかもしれません。しかし実際には遺伝子の検査も万能ではなく、検査をしても遺伝子の変化を見つけられないこともあります。また、遺伝子の変化を見つけられなかったからといって、必ずしも「ファブリー病ではない」ということにはなりません。症状などから総合的に判断する場合もあります。遺伝子の検査の結果に関してわからないことがあれば、遠慮なく質問してみるとよいでしょう。
ファブリー病と診断されたことを親族に伝えたほうがよいでしょうか?
※ 遺伝カウンセリングとは
遺伝にかかわる悩みや不安、疑問などをもたれている方々が臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラー®に相談をすることができる場です。遺伝カウンセリングでは、科学的根拠に基づいて正しい医学に関する情報をわかりやすくお伝えし、理解していただけるようにお手伝いします。そのうえで、十分にお話を伺いながら、ご本人自らの力で問題を解決していけるよう、心理面や社会面も含めた支援をおこないます。
就職はできますか?また、仕事を続けることはできるのでしょうか?
もちろん就職できますし、仕事を続けることもできます。
ただし、いまどのような症状がみられるのかによって、働き方に注意する必要があります。例えば、心臓に症状があらわれている方であれば、身体的な負荷のかからないような職種で勤務できるよう働きかけるなど、職場にはあなたの体の症状に合わせた配慮をしてもらえるようにお話しするのがよいかもしれません。もっとも問題となるのは、治療(酵素補充療法の場合は、2週間に1回)のために、会社を休んだり、仕事を調整する必要が生じるときです。このことを会社側に伝えずに就職し仕事を続けることは難しい場合もあります。様々な社会保障制度も利用しながら、ファブリー病やあなたの体のことを理解してもらえるような会社に就職することができれば、仕事も続けやすくなるでしょう。また、医療機関によっては土曜日に治療が可能な場合もあるので、主治医の先生とも相談してみてください。
進学や就職、結婚などのライフイベントに伴う問題へのサポートは、遺伝カウンセリングにおいて非常に重要な役割の1つです。ライフイベントに際してお困りのことがありましたら、1人で悩まずに遺伝カウンセリングで相談してみてください。
監修:大阪公立大学大学院医学研究科 臨床遺伝学・発達小児医学
医学部附属病院 ゲノム医療センター・ゲノム診療科 病院教授 瀬戸 俊之 先生
大阪公立大学医学部附属病院 ゲノム医療センター 認定遺伝カウンセラー® 馬場 遥香 先生