患者さんとご家族の声
代わってあげられるなら、代わってあげたい
- 私と妻の間には5歳になる一人娘がいます。生後3ヵ月頃、首の据わりがよくなく、夜泣きもひどかったことが症状の始まりだったように思います。5ヵ月のとき、発達障害が疑われましたが、のどがゼロゼロ鳴るなどの症状があり、てんかんの疑いで検査入院しました。その後、白血病や脳性麻痺の可能性が指摘されましたが、最終的にはゴーシェ病と確定診断されました。8ヵ月頃のことです。
- 聞いたことのない病名でしたが、薬があると知り、少しは安心しました。しかし、インターネットで調べるとゴーシェ病Ⅱ型の特徴にあてはまることがわかり、予後不良という事実に「代わってあげられるなら、代わってあげたい」と思うばかりでした。妻は娘に24時間付きっきり、私は会社と病院と自宅を行き来する毎日でした。
- 治療を始めたのは9ヵ月の頃です。ところが、神経症状やのどの症状が悪化し、胃瘻造設、気管切開による人工呼吸器装着、と立て続けに苦渋の決断を迫られました。身を削る思いの中、手術室に入る娘が笑顔を見せてくれたとき、「1歳にもなっていないのに、親を超えた」と娘を誇りに思いました。一方で、気管挿管された娘の姿を目にしたときの気持ちは今でも忘れられません。
在宅医療で家族一緒に楽しく過ごせる時間が増えた
- 長期の入院生活に限界を感じ始めていた私たちは、在宅医療へ移行しようと、娘の1歳の誕生日を前に、それまで暮らしていた地方からそれぞれの実家に近い東京へ転居しました。
- 念願叶って帰宅できたのは1歳半の頃です。在宅でのケアには不安もありましたが、ソーシャルワーカーや訪問診療所のみなさんのお陰でスムーズに体制を整えることができました。2歳になるまではけいれん発作が頻発し、妻も私もほとんど眠れない毎日でしたが、3歳を過ぎると症状が落ち着くようになりました。
- 家では訪問看護師の方々が四季折々のイベントなどを開いてくれて、最初の頃は娘の笑顔をたくさん見ることができました。今は週に一度、近所を散歩したり、1~2ヵ月に1度は車を借りて遠出もします。以前に比べれば目を閉じている時間が増えましたが、1日1回は必ず抱っこしないと不機嫌になったり、楽しいとちょっと口角が上がったり、家族にしかわからない感情表現があり、かわいいことに何も変わりはありません。人工呼吸器をつけたことを今では後悔していません。娘の生きたいという強い気持ちに応えるように、一緒に過ごす時間を大切にしていきたいです。
周りの人たちのサポートのお陰で、今の生活がある
- 今の生活があるのは、医療従事者の方々のサポートはもちろん、会社の理解や協力、患者会の存在があったからこそです。患者会では同じような立場の人たちと出会い、「一人じゃない」と感じることができました。患者会を上手に活用すれば、治療面だけでなく、さまざまな制度の活用方法など生活に必要な情報を得ることもできます。
- 当事者にしかわからないつらいこともたくさんありますが、支えてくれる人は必ずいます。「なんとかなるから」と私に声を掛けてくださった人がいたように、今度は私が同じ思いを抱える患者さんやご家族の力になることができればと思っています。
※この内容は2019年9月時点のものです。